『永遠の別れ』
2013-02-24 Sun 13:05
ジョージは一人で部屋の中から外を眺めていた。
両親はしょっちゅう家を空ける事が多かった。
せめて兄弟でもいれば少しは寂しさを紛らわせたのだが、彼は一人っ子
だったので、こうやって家で留守番をする事が多かった。

しかし、今度の日曜日は違った。両親がいるどころか親戚が集まって
くるのだ。
その日は『死者の日』と呼ばれる、この島の行事で年に一度、親戚一同
が集まってみなで先祖を敬い亡くなった人の思い出を語り合う日である。
そしてその日は、母親の祖父母、つまりはジョージの曾祖父母の思い出
をみんなで語るのだ。

日曜日になった。
その日は普段は静かな家の中が、走り回る子供も増えて賑やかになった。
母親のカテリーナはとても料理が得意で、島の料理がたくさんテーブル
に並べられた。
カポナータ(野菜がたっぷりの酸味のある煮込み料理)、子牛のマルサ
ラソース、(ワインベースの肉料理)、イワシのパスタ、など島特産の
食材を使用した料理が所狭しと置かれている。
カテリーナはそんな中、手を休めずにこう言った。
「つまみ食いはダメよ、ジョージ」
ジョージは慌てて手を引っ込め、すまして答えた。
「見てただけだよ、ママ」
「あーら、そう?」
カテリーナは笑って、ジョージの頭に優しく手を置いた。
「パパを呼んで来て。デザートが出来たわ。」
「はーい。」
彼は元気よく返事をして、同じように元気よく駆けて行った。
庭に目をやると、親戚の子たちと遊んでいる父親のジュゼッペに抱きつ
いている幼い息子がいた。
カテリーナは微笑んだ。

この行事では大人達が子供達に贈り物をする。
だから、この子供達もクリスマス同様、この行事も楽しみにしているの
だ。
そしてこうした楽しい時間はこの一日限りだがとても思い出深いものと
なるのである。


数日後。
居間でジュゼッペとカテリーナが真剣な表情で向かい合っていた。
しばらく2人は黙っていたが、やがてジュゼッペが口を開いた。
「ギャラクターを抜けよう。」
カテリーナはキッと顔を上げた。
「…あなた…本気なの?」
「ああ。」
「そんな事したらー」
「覚悟はしてる。でも、もう嫌なんだ。彼らのしている事が恐ろしくて
耐えられない。人殺しの手助けをするのはもう真っ平だ。」
カテリーナは静かに夫を見つめた。彼女もまた、同じ考えだった。
「それに、あの子にいつまでも寂しい思いをさせたくない。多感な頃に
親が2人ともいないというのは良くないよ。
多分、このまま居続けたらギャラクターはあの子を引き入れてしまう。」
カテリーナは口を押さえた。
「…なんて事を。」
「もしもの時には、とにかくお前はジョージを連れて逃げろ。子供には
母親が必要だから。」
「……あなた…」

そしてある日、ジュゼッペは子供部屋へ行き、ベッドの上で窓に向かって
お祈りをしているジョージのところへ近づくと、そっと隣に腰掛けた。
ジョージは彼の気配を感じたのか、振り向いて父親の背中を見た。
「…パパ?」
ジュゼッペは自分をそうっと見上げている彼を見て思わず吹き出しそうに
なった。ジョージはかなりの腕白で、しょっちゅう悪戯しては自分に叱ら
れているので、きっと小言を言いに来たに違いないと思っているのだろう。
「ジョージ。パパとママと一緒に出かけよう。」
「どこへ行くの?」
「お前の行きたいところでいいよ。…なるべく遠くがいいな。」
しばらくジョージは考えた。そしてあっと言う表情をした。
「じゃあねえ、海が見たいな。」
「海?」
「うん。そこで遊びたい。」
「そうか。分かった。じゃあ着替えておいで、すぐに出かけよう。」


『ジュゼッペ・浅倉はまだ見つからないのか。』
「はっ、妻と息子を連れてどこかへ逃げたと思われます。」
『探せ。家族全員抹殺しろ。裏切り者はどうなるか思い知るがいい!
他の者達へのいい見せしめになろう。』

彼らは静かな浜辺にいた。夫妻は打ち寄せる波に戯れているジョージを
見て微笑んだ。
そんな彼らの背後、遥か遠くにギャラクターの女忍者部隊・デブルスター
が潜んでいた。夫妻は背中を向けていた事もあるが、息子を見ていて緊
張感が薄れ敵の気配に全く気づく事が出来なかったのだ。

銃声が響き渡ったのはそれからすぐだった。
ジョージの目の前で、両親は息絶えたのであるー。


コメント


kisaraさん、こんにちは。
この部分は書きたくても書けなかった部分です。
良くぞ書いて下さいました。
本当にkisaraさんは何でもありですね。

両親がギャラクターを脱けようとした理由付けがきちんと解り易く書かれているので、読む者を納得させてくれる作品に仕上がっていると思います。
これからも是非挑戦して下さいね。

私も負けてはいられない……(←独り言)

2013/2/24(日) 午後 1:22


こんにちは、minakoさん。

>この部分は書きたくても書けなかった部分

ついに書いてしまいました(爆)
ってか、書きたかったと言うか。。
ジョー本人でさえ知らなかったで(知らされていなかった)あろう両親の秘密、これは想像甲斐がありますよね。

>両親がギャラクターを脱けようとした理由付け

やっぱり抜ける第一の理由は「子供のため」だと思うんですよね。
殺人の片棒を担いでいるのも我慢できない事でもあるし、きっと子供に影響が出ると考えたのでは、と思うのです。
あのままジョーがギャラクターに入ってしまってたら、きっと最強の隊員になって、ベルクカッツェどころか総裁Xを倒しちゃうかもしれないです。ゆくゆくはギャラクターを支配。。
恐ろしー(良かったね、こうならなくて)
で、そして科学忍者隊と対決?!どうなる?(妄想するな)

にしてもminakoさんにはまだまだ及びませぬ。精進いたします。

[ kisara ] 2013/2/24(日) 午後 4:44


こんばんは、kisaraさん。

おぉ、先日テレビの番組でシチリアの「死者の日」を見たばかりなのでその様子が目に浮かびました。

私もジョーのために二人はギャラクターを裏切ることになったと思っています。
でもなぜ我が子にも危険が及ぶかもしれない厳しい選択をしたのか?
そもそも何でギャラクターに入ってしまったのか?

私もジュゼッペが幼い頃からギャラクターを裏切るまでのお話を考えてはいるのですが考えれば考えるほど難しいです・・

これからもまたたくさんお話を書いてくださいねー♪

[ 南部響子 ] 2013/2/24(日) 午後 8:25


こんばんは、響子さん。

>先日テレビの番組でシチリアの「死者の日」を見たばかり

この前やっていた「世界ふしぎ発見」でシチリア島をやっていた時にこの「死者の日」というのをやっていたので(同じ番組?)、それを題材にしようと思いました。けっこうこういった番組も見るといい事ありますね。
この島はすごく綺麗な所だけど、歴史に翻弄された一面もあっていろいろ調べたらけっこう面白いかもしれません。

>そもそも何でギャラクターに入ってしまったのか?

確かにそこまで網羅するとかなり深くなりそうですね。書くとしたら、長編になりますね。(うわー、無理かも~)
挑戦してみるのもいいかも。。。(←ホントに?)

でも本当に何故彼らはそのような生き方を選んだのでしょうね?
追求してみる価値はありそうです。
考えてみようかな?仰るとおり難しそうですが。

[ kisara ] 2013/2/24(日) 午後 9:48
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